大人用
表紙/裏表紙
見返し/---
ヒロシの クリスマスの願いごと あなたにおくる おはなしのほん ますやま あつし作 CABジャパン編集 ヴァレリー・ウェブ画 |
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さくら ヒロシ さま メリークリスマス! これは あなたのために特別に作られた本です。 夢を忘れてはいかんよ 2007年12月25日 サンタの友蔵より |
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「今年のクリスマスプレゼントはどうしよう?」 40歳のヒロシは ため息をつきました。 世の中はクリスマスムード一色。 街はうきたつような空気に包まれています。 でも ヒロシの目下の悩みは、 ももこと、さきこへの クリスマスプレゼントが きまらないことなのです。 部屋に飾られたクリスマスツリーを眺めながら、 ヒロシは 40回目のため息をつきました。 |
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幼い頃、クリスマスの朝には、 プレゼントがいつも枕元に置かれていました。 でもヒロシは、もう自分でプレゼントを 探しにいかなければならないのです。 『電話一本、30分でお届け』してくれる、 ピザ屋みたいなサンタクロースはいないかなあ。 プレゼントのことを考えすぎて、 ヒロシの頭はオーバーヒート気味! そのときでした。 郵便受けがコトリ、と小さな音をたてたのは。 |
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郵便受けをのぞくと、見慣れない模様をあしらった、 一通の手紙が入っていました。 そこには消印も、しみずの ヒロシの住所もありません。 ただ、『 さくらヒロシ様』という文字があるだけです。 封を切ったヒロシは驚きました。 そこには、こんな文章があったのです。 さくらヒロシ 様 わしはサンタクロース。 クリスマスももうすぐじゃが、いかがお過ごしかな。 サンタクロース?? ヒロシの頭はいっきに真っ白になりました。 |
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サンタクロースの国は今、 クリスマスプレゼントの準備で大忙しじゃ。 なにしろ、世界中へプレゼントを運ぶんじゃからな。 ヒロシはどんなプレゼントをお望みかな? サンタクロースの国、特製クッキーはどうじゃ。 もみの樹の形をしていて、 それはそれはおいしいクッキーじゃよ。 |
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ヒロシはやっぱりそうかと思いました。 これは最近、近所にできたケーキ屋の、 ダイレクトメールに違いありません。 でも手紙の文章はまだまだ続きます。 プレゼントの用意ができると、 こんどはトナカイたちの準備をしなきゃならん。 金の鈴がついたひもを、一頭一頭つけていくんじゃ。 これがあの有名な 「ジングルベル」という曲になるんじゃよ。 |
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ヒロシは、信じられない、と思いました。 サンタクロースなんて架空の人物で、 そんな話はとっくに卒業したはずなのに・・・ でも手紙には・・・ サンタクロースなんているもんか、 と思っておるじゃろう。 サンタクロースを見たかったら、 クリスマスイブにサンタクロースの国にくるとよい。 世界中の国々に飛び立つサンタクロースのソリを、 一般公開しておる。 |
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ヒロシは、またわからなくなりました。 どうやらこれはケーキ屋どころではなさそうです。 もしかするとフライドチキンの店かもしれない!? ヒロシの脳裏に、小太りで、 めがねをかけ、いつもニコニコして町角に立っている、 とあるおじいさんの姿がうかびました。 わしはみんなの視線を浴びながらソリに乗り込む。 まるでスターになったきぶんじゃ。あたりは大騒ぎさ。 みんなの寝顔を見るのもいいが、 幸せそうな笑顔を見るのは、 もっといいもんじゃよ。 |
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ヒロシはちょっとばかり想像してみました。 もし自分がサンタクロースの国に行けたら! なんてわくわくする光景なのでしょう。 そうか、これは旅行会社のパンフレットなんだ!? 『冬休みはスキーをかねてサンタクロースの国へ!!』 こんなキャッチコピーがうかびました。 みんながわしに手をふってくれておる。 いよいよ出発じゃ。忘れ物はないかな? |
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それからわしは、トナカイたちに、 「さあ、行こう!」と声をかける。 するとそりはあっというまに空の上。 空気は冷たいが、とてもよい気持ちじゃ。 いちど乗せてやりたいくらいじゃよ。 この手紙は航空会社のパンフレットかもしれない!? と ヒロシは考えました。 北欧の空を遊覧飛行する会社なのです。 でも、ヒロシは高いところはちょっと苦手です。 |
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めざす家に到着すると、さあ仕事じゃ。 エントツから、といいたいところじゃが、 近頃はエントツのない家が多いから大変じゃ。 なんとか家に入りプレゼントを置いたら、 すぐ次の子の家にいかなきゃならん。 プレゼントのリストは、 子供たちの名前でいっぱいじゃ。 こんどは警備会社のパンフレットかな? と ヒロシは思いました。 『サンタクロースも入れない防犯装置』じゃ、 サンタクロースがかわいそうです。 |
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クリスマスの前には、 たくさんのおもちゃを作る仕事がわしを待っておる。 家では、一日中にぎやかな音がしているが、 それはおもちゃを作る音なんじゃ。 こんどは隣町にできた大きなおもちゃやさんかな? と ヒロシは考えました。 そして子供のころ、目が覚めると、 きまって枕元に置かれていた プレゼントのことを思いうかべました。 昨夜までなかったおもちゃが、朝そこにあるのは、 とても不思議で、魔法のようでした。 |
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ヒロシ、 おまえさんはもうおもちゃで遊ぶ子供ではないが、 今回のクリスマスには、 特別にプレゼントをあげることにしよう。 はてさて、何だと思うかね? この手紙を最後まで読んでくれればわかるが、 それはまだ秘密じゃ。 |
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そろそろたくさんのプレゼントが、 きれいに包まれて、いろんな国に旅立つところじゃ。 サンタクロースのプレゼントというもんは、 ただおもちゃを包んでいるだけではないぞ。 その中には、 夢だの、希望だの、感謝だの、愛情だのといった 気持ちがいっぱいつまっとる。 子供たちは、プレゼントをあけたとき、 その気持ちも一緒に受取ることになるんじゃ。 もちろん、ヒロシや ももこと、さきこへの プレゼントにも入っておるとも。 |
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さあ、いよいよ出発じゃ。 わしはおなじみの赤い服を着る。 北極の空の凍るような寒さも気にならんような、 完全防寒仕様じゃ。 プレゼントをつめた大きな袋をソリに乗せ、 たくさんの子供たちに会えるのももうすぐじゃ。 外はもう、しんしんと雪がふっておる。 ヒロシ、おまえさんへのプレゼントは、 サンタの友蔵にあずけておいた。 ま、楽しみにしておれ。 |
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わしは空をひとっ飛び。 ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジア、そして しみずにもプレゼントを届けにいくぞ。 プレゼントを待っとる子供たちは世界中におるからな。 そうじゃ、忘れておった。 わしがこんな手紙を書いたのは、理由がある。 プレゼントが無事おまえさんへ届くには、 ひとつ条件があるからなんじゃ。 それはクリスマスの朝に、ひと言こういえばよい。 つけくわえるなら、できるだけ明るく、楽しくやってくれ。 ヒロシは、 いそいで最後の紙をめくりました。 そこには・・・ |
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メリークリスマス! ヒロシは、 ももこと、さきこへの プレゼントを選びにコートをはおると、 楽しそうに出かけて行きました。 ポケットには、 サンタクロースからの手紙が入っています・・・ |